ご無沙汰しておりました。牡牛です。
いよいよ、秋も深まってまいりました。食欲もでてきて、お腹が成長してきました。では、開発部としてSAT SYSTEM開発についての2回目を説明します。
前回 (SAT SYSTEMについて 1) 、オフセット印刷へのトライを始めたところでした。印刷を水ありで行っていた我々でしたが、水が有ってはいけないという事に気付き始めていきます。オフセット印刷のこともよく分からず、況してや、水なし版については、全く情報が無い状態なのにです。水なし版がいいだろうとなった理由は、只々、水を使わないからです。
SAT印刷では、シートを装飾するだけではなく、装飾したシートを、成形、樹脂入れの段階まで、持っていかなくてはなりません。そして、耐久消費材の部品となります。この場合、極力、水分の保有はさけたいものです。別の言い方をすれば、水がインキ中に残ってはいけないのです。
インキが硬化すれば、樹脂、言い換えれば、プラスチックです。このプラスチック中に、水が存在していては、たとえ、製品化できたとしても、加水分解などの影響は、避けられません。特に、製品内部の樹脂接合面に封じ込められるという、急所のような部分で水を抱えることとなってしまいますので、絶対に避けなければいけませんでした。すると、選択肢は、水なし版しかありませんでした。この時、フレキソ印刷や、グラビア印刷の事も考えましたが、設備の規模、ハンドリングのし易さ、ランニングコストと効率、ロットに対するコスト効率から考えると、水なしUVオフセット印刷が最適という事になりました。
じゃあ、水なし印刷用のインキを作ろうという事になりました。
がしかし、どうすれば、水なし版の柄にインキが地汚れ(非画線部にインキが付いてしまう事)せずに、転移してくれるのかが、良く分かりませんでした。先ずは、版を見てみようという事で、水なし版を取り寄せて、見たり、触ったりしてみて、機械ではなく、手持ちのローラーで、インキを版に塗りつけてみました。
幾つかの種類のインキを付けてみて、やがて傾向が見えてきました。やはり、本機に入れてみたくなりましたが、水なしオフセットの印刷を何処がやっているのか?という時、海外で、水なしでプラスチック向きのUVオフセット印刷機の実演がある事を、ミノグループさんや我が上司達が嗅ぎつけて、ドイツまでインキ持参で、印刷をお強請りしにいきました。先方もビックリのようでしたが、工場のデモ機で印刷してくれたそうです。結局、刷った印刷物と、ドイツ語で書かれた専門書を渡されて帰ってきました。
印刷物を見てみたら、ある程度柄になってるじゃなか、という事でしたが、通常なら、NGの状態です。しかし、本を渡されたという事は、もっと勉強しろと言う事で、専門書は、ミノグループさんが引き取られて、水なしオフセット印刷のインキの特徴を研究されました。やがて、インキの物性はこうではないか、という事で、できたインキがありました。しかし、何処で印刷テストをしてもらうのか、という事となりましたが、とある方の助言で、リョービMHIグラフィックテクノロジー様の東京ショールームで、水なし印刷をしていただくという、事の運びとなりました。
当時のオペレーターの方は、後に、弊社で、オペレーティング指導してくださるEさんでしたが、その時は、機械を回されて、なんじゃこりゃの状態で、周りの方々も、機械から、離れてしまう程の状態でした。印刷機から、各色の色の煙がでてきたのです。これは、印刷前から無理というお返事をいただいてしまいました。更に、むりやり印刷してみても、地汚れが酷く、ローラーにインキが巻き辛いという状態でした。
この時、立会をされた、ミノグループでインキ開発をされているSさんは、帰社後、ねじり鉢巻きでインキの物性をいじりまくったようです。そして、リベンジさせていただけることとなり、リョービMHIグラフィックテクノロジー様の本社ショールームで再トライさせていただきました。
Eさんも警戒しながらでも、取り掛かってくれました。刷り上がりは、以前より、柄がハッキリしてきましたが、材料の種類により、刷り上がりが異なり、多色刷りはできない状態でした。少しだけ進歩していました。また、LED-UV装置の波長域が、インキの開始剤と合ってないのか、キュア状態が悪く、まだまだでした。そして、また次にという事で、リョービMHIグラフィックテクノロジー様も、我々のチャレンジに、巻き込まれてゆく事となっていくのです。
今回はここまでです。次回は、更に泥沼化してゆくチャレンジを紹介いたします。